独裁と権威主義に立ち向かう世界的民主運動を構築する(一部抜粋)

独裁と権威主義に立ち向かう世界的民主運動を構築する

 

バーニー・サンダース  世界20192月号

 

いま、地球規模で起きている事

現在、途方もない影響をもたらす一つの闘いが米国で、そして世界中で起きています。その闘いの中で、わたしたちは2つの相反する展望を見せています、一方では、独裁権威主義、寡頭政治、泥棒政治の高まりに向かっていく世界的な動きが見えています。もう片方では、民主政治、平等主義、そして経済・人種・環境の正義を増強していこうとする動向が見えます。

この闘いは、経済的にも、社会的にも、そして環境の面でも、この惑星の未来すべてに重大な影響を及ぼします。

 世界経済の観点からすると、現在、大規模な富と所得の不平等がますます深まる中、世界の最上位1パーセントが下位99パーセントよりも多くの富を所有し、少数の巨大な金融機関が数億人もの生命に圧倒的な影響力を振るっています。

 さらに、先進工業諸国の多くの人々が、民主政治は実際に自分たちのために役立っているのか、という疑問を抱いています。人々は以前よりも少ない賃金のために、より長い時間働いています。こういった人々は巨額のカネが選挙の結果を左右しているのを目にし、自分の子どもたちの未来がどんどん暗くなっているのに、政治的および経済的な上流階級がますます富を築いているのを目にしています。

 

独裁権威主義の共通する傾向

 「この枢軸を形成するリーダーたちはいくつかの点で異なるかも知れませんが、極めて重要な複数の特性を共有しています。たとえば、少数民族や宗教的少数派に対する

不寛容、民主制度の規範に対する敵意。報道の自由に対する敵対心、外国の陰謀に関する絶え間ないパラノイア、そして利己的な金銭上の利益を享受するためなら政府指導者が権力の立場を利用しても構わないはずだ、という考え方です。

 興味深いことにこのようなリーダーの多くは、世界を自分のための経済的なおもちゃ扱いする超億万長者の独裁支配ネットワークとも深い結びつきがあります。」

 

現状維持から決別し、地球規模の連帯を生み出す

「しかし、実際のところ、右翼の独裁権威主義に効果的に対抗するためには、単に守りの態勢に立っているだけではだめなのです。わたしたちは先を見越した積極的な失敗を擁護しているだけでは不十分だということを理解する必要があります。それどころか、わたしたちが現在直面している困難は、その現状維持が生んだものだという認識が必要です。」

「世界の最上位1パーセントの人々が地球の富の半分を所有している中で、労働年齢の人口のうち下位70パーセント世界中の富のたった2.7パーセントにしか値しないという、途方もない富と所有の不平等を許さないことです。わたしたちのやるべきことは世界中で多くの労働者の生活水準が低下している事を容認しない事です。簡単に予防できる病気で何百万人もの子供たちが死亡するような極貧状態で暮らす、14億人もの人々の現実を容認しないことです。」

「わたしたちのやるべきことは、世界中の政府を支援して富裕層や多国籍企業が公平な税金の支払いを回避するためにオフショア銀行口座に21兆ドル以上もの金額を隠しておきながら、自分たちの労働者の家族には緊縮経済政策を押し付けるように各政府に要求するという、とてつもない不条理を終わらせることです。」

「わたしたちがやるべきことは、全地球規模の大結集を行い、子どもたちや孫たちに残すべきこの惑星を炭素排出によって破壊して巨大な収益をあげ続けている化石燃料企業に立ち向かうことです。

科学界は、ほぼ全員一致で、気候変動は現実であること、気候変動は既に世界中で深刻な危害を起していることを提示しています。さらに科学者たちは、この気候の危機に対してわたしたちが大胆な取り組みをしなければ、この惑星にはさらに頻繁な干ばつ、洪水、極端な天候異変、海洋の酸性化、海面の上昇が起こり、大規模な人口移動のけっかとして世界の安定や試案にさらに多くの脅威が訪れると忠告しています。

 昨日公開された、国連の気候変動に関する政府間パネルの新しい報告書は、取り返しのつかない被害をもたらす地球の気温上昇を回避するためには、緊急かつ前代未聞の行動を起こしても、わたしたちに残されている時間は約12年間しかないと警告しています。」

「民主制を維持し広げていくための闘いの中でわたしたちがやるべきことは、米国市民―多くの有色人、貧困層の人々、若者たち―が投票しにくくするために、トランプ大統領が強く支援し、コーク兄弟のような少数独裁主義者が資金援助する組織的な取り組みに対抗し、反撃に転じることです。

 少数独裁主義者は単に選挙を金で買うだけではありません。彼らの計画の主要な要素として、権力を維持するために有権者の抑圧まで行うのです。」

 

資源を軍備だけでなく人々を支えるために使う

「冷戦から長い時間が経っているというのに、世界中の国々で一年につき数兆ドルもの金額が破壊兵器に費やされている一方で、何百万人もの子どもたちが簡単に予防できる病気で死亡しているのです」

ストックホルム国際平和研究所によると、世界中の国々で一年につき合計1兆7000億ドルですよ。これだけの近眼の如く一部だけでももっと平和な目的のために使うことができたとしたら、いったいどんなことを達成できるか考えてみてください。国連の食糧農業機関の事務局長は、世界の食料危機は一年につき300億ドルあれば解消できると言っていました。それはわたしたちが武器に費やしている金額の2パーセント以下なのです。」

「経済開発や貧困との闘いの分野で世界第一人者の一人、コロンビア大学のジェフリーサックスは、一年につき1750億ドルを20年間続けることで世界の貧困を解消することができると見積もっています。それは世界が武器にかけているコストの約10パーセントです。」

 

創造的な意思と国際的な運動が必要だ

「そのような運動では、わたしたちが実現を望んでいる世界について創造的で大胆な思考を展開する志が必要になります。独裁権威主義の枢軸が、権力と富にアクセスするうえで障害とみなしている第二次世界大戦後の世界秩序を解体することに尽力している中で、単にその秩序をあるがままに守ろうとするだけでは十分ではありません。その秩序がどうして様々な約束を実現できなかったのか、そして独裁権威主義たちがそのような不履行に巧みにつけ込み、自分たちの計略的意図に対する支持をどうやって構築したのか、ということについて率直に目を向けなければなりません。

 わたしたちは人間の連帯に根ざした世界秩序―この惑星上の一人一人が共通の人間性を共有していることを認める秩序、子どもたちが健康に育ち、良い教育を受け、適切な仕事を持ち、きれいな水を飲み、きれいな空気を吸い、平和に生きることをわたしたち皆が望んでいるのだと認識する世界秩序を再び捉えなおすために、このチャンスを活用する必要があるとおもいます。

 わたしたちがやるべきことは、こういった価値観を共有し、より良い世界のために闘っている世界中のあらゆる場所にいる人々に手を差し伸べ、つながることです。

 独裁権威主義者は分断と憎しみを広めることによって権力を求めます。わたしたちは団結と共生を広めていきましょう。

 富も技術も飛躍的に成長する時代に生きるわたしたちには、みんなが穏当な暮らしを営める世界を作り出す潜在的な力があるはずです。わたしたちが取り組むべき仕事は、共通の人間性を足場にして、責任をないがしろにしてきた政府権力であれ、わたしたちを分断し、お互いを対立させるように仕向けてきたすべての勢力に対抗しできる限り全力で立ち向かうことです。こういった権力勢力は国境を越えて協力し合ってきました。わたしたちも同じように国境を越えて団結する必要があります。」

 

【解説】社会正義を求める国際連帯の兆し

DiEM25(ヨーロッパ民主化運動25):古代ローマの詩人ホラティウスの詩の著名な言葉Carpe diem(その日の花を摘め=今ある機会を逃がすな)の意を汲んでいる。

 「この危機感は、1930年代に世界が直面した圧倒的独裁体制の経験に根ざしている。

 第二次世界大戦で解体されたはずの軍事財閥は、東西を問わず数十年を持たずに忽然と蘇り、急速に肥大し続けている。独裁政治を支える巨大資本体制は、戦争経済で生き血を吸い、世界金融機構の鎧をまとって国境を越え、密接に連動しながら天然資源と労働の搾取の効率を高めてきた。世界の一般市民はこの怪物に今度こそ根本的な打撃を与えることができるだろうか。」

 

宮前ゆかり リサーチャー 翻訳家